今井朋(アーツ前橋キュレーター)
考古学者が地層の中に遺物を発見し、それを通じて過去と未来を繋げるように、鈴木ヒラクは現代の日常の中に潜む様々なライン(線)を見出し、描く/書くことによって、時間や空間に新たなチューブ(回路)を生成する。
ライフワークでもある《GENGA》(言語と銀河の間を意味する造語)で鈴木は、コピー用紙とマーカーで未知なる記号の断片を収集し、世界を認識するもう一つの方法としての言語を作り出すことを試みている。《Constellation》シリーズは、墨による背景に、星雲のようなシルバースプレーの飛沫とマーカーによって架空の星座を描いた作品である。鈴木の身体行為によって、無数の文字や記号が点と線に解体、再配置され、動きと秩序を伴った全体が形づくられる。反射板を素材とした床置きの新作では、火星の地形から引用した背景に、都市の俯瞰図などを想起させる光のドローイングが描かれた。今回の作品群によって、地下のギャラリー空間は、先史の時代に私たち人間の祖先が洞窟の壁面に原初の文字を刻んだ瞬間、あるいは別の惑星において最初の文明が発生するような瞬間を、現在という時の中で捉えるための場となる。
2017年10月
アーツ前橋「ヒツクリコ ガツクリコ ことばの生まれる場所」作家解説
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